「6月の花嫁は二度死ぬ」山谷逃避行(9)をカクヨムにアップしました

犬と同じように、あちこちマーキングして回り、居心地のいいテリトリーを作り、そこに住みついてしまう。
吹く風にまかせて漂泊してもいいはずなのに、テリトリーの中で、じぶん独自のルーティンを作ってじぶんを縛りつける。
それでやっと安心する。
しょせんじぶんは堅実な生活者で、人生の冒険者などにはなれやしない。
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「6月の花嫁は二度死ぬ」山谷逃避行(6)をカクヨムにアップしました

ひとの声もしない静かな店で、ひとりで酒を呑むのははじめてだった。
・・・しかも立ったまま。
酒は大勢で、少なくとも二人で何か食べながら、しかも座って呑むのが当たり前と思っていた。
めったにひとりで飲みには行かないが、バーならバーテンダー、スナックならホステスという話し相手がいる。
これはかなり勝手がちがう。
だが、ひとりぼっちになった孤独感よりも、
「すべてを捨てるって、こんなに気持ちがいいんだ!」
と叫びたくなるほど、爽快感のほうが大きかった。
・・・だが、どうにも手持ち無沙汰だ。
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「6月の花嫁は二度死ぬ」山谷逃避行(5)をカクヨムにアップしました

アーケード街の突き当りまで行ってみて、道路の向こう側が吉原のソープ街ということが分かった。
玉姫稲荷側のアーケードの入口近くに酒屋の立ち飲みがあったのを思い出し、アーケード街をもどった。
コの字型のカウンターの正面に立って、
「ビール」
というと、前掛けをした若い店員が、冷蔵庫から缶ビールを出して右奥のカウンターに置いた。
左奥に三人、右奥にひとり先客がいた。
正面はあとから来る客のために空けておけということか。
缶ビールに手を伸ばそうとすると、
「おい、先払いだろう」
隣に立つ、鶴のように痩せた白髪の老人が、甲高い声をあげた。
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