「6月の花嫁は二度死ぬ」山谷逃避行(7)をカクヨムにアップしました

昼すぎからは、アーケード街のとば口の立ち飲み居酒屋へ出かけた。
鯖缶とビールをオーダーすると、左奥に先客が三人いたので、昨日と同じように、右奥の鶴のようにやせた白髪白髭の老人の隣に回された。
老人は、昨日と同じように、茶褐色になった岩波文庫を開いて目の前に、横には舛酒を置き、読んでは飲み、飲んでは読む、を規則正しく繰り返していた。
缶ビールが空くころ、鳥打帽にニッカボッカ姿のガタイのいい男が店に入って来てあたりを見回し、つかつかと老人に近寄った。
「今月の払いはどうなった!」
男は、背後からいきなり肩をつかみ、老人をじぶんの方へ向かせた。
「いつまでも払っておれんが・・・」
と、口答えする老人の胸倉をつかんだ男は、
「契約を守れよ。ひとの道に外れてはいかん!」
男のいかつい風貌と、契約とかひとの道ということばが、あまりにかけ離れているのがおかしい。
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